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シンポジウムのご案内:医療者の心を守る

みなさま、

管理人のちーひめです。

今日は、シンポジウム「医療者の心を守る」
のご案内をさせてくださいね。

このサイトで中心となって原稿を書いてくださっている
内科医の舘有紀先生が司会をしてくださり、また、
このサイトの協力者でもある精神科医の泉和秀先生が、
シンポジストの一人としてお話をしてくださることに
なっているシンポジウムです。

このサイトを読んで関心を持ってくださった方なら
もしかして、興味がおありかもしれません。

そこで、ご案内の文章を紹介させていただくことにしました。

このサイトを機縁として、
参加して下さる方が一人でもいらっしゃるなら、
こんな嬉しいことはありません。

ーーーーー

シンポジウム「医療者の心を守る」が、以下の
日程で開催されます。

平成18年8月20日(日)午前9時〜10時30分

参加費がかかりますが、関心のある方はいらして下さい。

(社)地域医療振興協会・小児心身医学会共催
     第5回地域医療学術集会

日時:平成18年8月19日(土)〜20日(日)

場所:都道府県会館 1階および4階
   東京都千代田区平河町2-6-3
   東京メトロ永田町駅下車

対象:地域医療に従事する医療関係者、医療系学生、その他

参加費:会員(地域医療振興協会)5000円
    非会員 医師5000円 その他の職種の方3000円

以下のHPに、学術集会のプログラムが掲載、
参加申し込みも可能

社団法人 地域医療振興協会 http://www.jadecom.or.jp 

連絡先 (社)地域医療振興協会 公益事業部 堀江
 
102-0093 東京都千代田区平河町2-4-1 
      日本都市センター会館9階

   TEL 03-5275-1051 FAX 03-5275-1052

シンポジウム 「医療者の心を守る」

平成18年8月20日(日)9時〜10時30分

司会 地域医療振興協会 石岡第一病院内科 舘有紀

シンポジスト

★大阪医科大学小児科 田中英高
   医療者の心を守る:いま私達ができること
★滋賀県立精神医療センター 泉和秀
   一精神科医の立場から:限界設定について
★筑波大学大学院人間総合科学研究科 看護科学系 上野恭子
   若い看護師が感じるジレンマとメンタルヘルス
★茨城キリスト教大学 栗原加代
   ターミナルケアでぶつかる壁:
自分自身が燃え尽きないために!
  

【1】医療者のメンタルヘルスケア
はじめに




12月10日(土)11日(日)、

自治医科大学地域医療研修センターで、
開催された2005年 AMSA Japan秋の国内交流会
が盛況の内に終了しました。

テーマは、『医療者のメンタルヘルスケア 〜より喜ばれる医療をめざして〜
午前中に行われた講義録をご紹介したいと思います。


地域医療学セミナー 講義録 (2005/12/10)
by 地域医療振興協会 石岡第一病院内科 舘有紀

【2】医療者のメンタルヘルスケア
概論




■ 概論

 『医療者の心を守る −医療者のあるべき姿を目指して−』
 「自分の心に向き合う」ことの大切さ
  地域医療振興協会 石岡第一病院内科 舘有紀
    
医療者のメンタルヘルスケアというテーマで少しお時間を頂きたいと思います。

自分の心に向き合うことで、問題解決能力が高まります。
自分の心に向き合うことで、1)〜3)のようなメリットがあります。

 1)もう一段上の医療を目指すことができる
 2)患者さんが求めている本質に気付くことができる
 3)自分という個を越えた医療の改革につながっていく

ですから、最初の視点は自分であり、医療者ではありますが、
必ずそれは患者さんの役にたちますので、
そのことを憶えていていただきたいと思います。

ほとんどの方が、卒業と同時に
医療現場で働くことが予定されていると思いますので、
今回は、医療現場で働くときの心構え、
心が辛くなったときの解決方法を見つけるには、
という感じで聞いていただければ幸いです。

【3】医療者のメンタルヘルスケア
医療者が心を病む原因・ストレスマネージメントの重要性




■ 医療者が心を病む原因

 1)自分が思い描く理想と、現実のギャップ
 2)過酷な労働条件
 3)世間の医療を見る目の厳しさ

私は平成6年に自治医科大学を卒業し、今は二次救急指定病院の勤務医です。
その中で、医療者の心を守りたいな、と思ったことが何度もありました。

今、医療現場では、何が起こりつつあるか、ということですが、
自分が思い描く理想の医療と、現実のギャップに悩んで、
心を病んでいく医療者が増えています。

また過酷な労働条件についていけなくて、
身体も心も余裕をなくしている医療者が目立ちます。

うつ状態に陥って休職を余儀なくされる医療者や、
重圧に耐えきれず自殺してしまう医療者が増えてきている今、
医療者に対するストレスマネージメントが急務になってきています。

最近ではそれに加え、世間の医療を見る目の厳しさもあります。
医療の現場は、人と人との良好なコミュニケーションが基本なのに、
お互いに心を開かず、警戒心や不信の中で医療が行われることが
目立つようになってきました。これは、いいことではありません。

【4】医療者のメンタルヘルスケア
医療者特有の苦しみ・悩み



■ 医療者特有の苦しみ

 1)患者さんが治らないという苦しみ
 2)家族から責められる苦しみ
 3)生と死の狭間で働くことの重圧
 4)誰にも理解されない心の孤独
 5)いい医療者を演じつづけてしまう苦しみ

また医療現場には、医療者特有の苦悩や悲しみがあります。

真面目で誠実な人であるほど、
何らかのトラブルが生じたときに、
それまで自分が懸命にやってきたことへの
意味を見失うことも多いように思います。

医療者は、人の心を観察することには長けているのですが、
案外、自分の心に対しては無防備です。

【5】医療者のメンタルヘルスケア
医療者のあるべき姿とは?治療的自我




■ 医療者のあるべき姿とは?

「治療的自我 therapeutic self」

    …医療を施す立場の人間として、理想とされる姿
 治療的自我の形成を目指して、自分の心を見つめること
 これが、医療者自身の心を守ることにつながっていく

さて、医療者の心を守るためには、どうすればいいのでしょうか。

結論になりますが、
医療者自身が自分の心と向き合うことから始まるように思います。

もちろん、ハード面、
医療システムを変えていくことも大事です。
しかし、医療者の心というものにも焦点をあてないと、
本質的には変わっていきません。

それでは、医療者の「あるべき姿」とは
いったいどういうものでしょうか。

私は、心療内科の領域で言われる、
「治療的自我(※)」に近いものと考えています。
医療を施す立場の人間として、理想とされる姿です。

治療的自我の形成を目指して、自分の心を見つめ、
できるだけコントロールしていくこと。
これが、医療者自身の心を守ることにつながっていきます。

心を見つめ、正していくことが、
これほどまでに大きな力を持つのか、ということは、
実際にやってみるとその威力が分かります。

(※参考書籍 柳田邦男 著 「元気が出る患者学」より)

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【6】医療者のメンタルヘルスケア
症例・医療不信が強い末期肺がん患者の例




■ 症例

 70代、男性、肺癌末期
 発見時にはすでに手遅れの状態
 医療不信が強く、信頼関係を築くのが困難だった

一つ、分かりやすい症例をあげてみたいと思います。

70代、男性、肺癌末期の方です。
症状が表に出てきた時にはすでに末期の状態でした。

「今まで健康だったのに、なぜこんなに突然病気になるのか!」
と、本人はもちろん、ご家族がもう大変な嘆きようでした。

発見される半年ほど前から、症状があったのですが、
近くの病院で発見できませんでした。
紹介されて入院してきましたが、混乱が強く、
怒りの矛先が私たち医療者に向きました。

手遅れになるまで発見できなかったこと、
また現代の医学では自分の病気を治せないことなど
医療全般に対しての不信を訴えられ、非常に対応困難な状態に陥りました。


【7】医療者のメンタルヘルスケア
症例・本当に患者さんのための医療になっているか?




■ 自分のための医療?

 本当に患者さんのことを考えているのか?
 心が間違っていると、うまくいかない

私はいつも、末期の患者さんとの関わりにおいては、
独特の信頼関係を保ちます。

たとえて言うなら、
もうすぐ亡くなる人の前でニコニコ笑っても、
それが失礼にあたらない、
家族も一緒に安心してニコニコ笑いあえる、
そんな独特な雰囲気が多いのですが、
その方の場合は、何度病室を訪れても、
膠着している状態が続きました。

事情が事情だから仕方がないのかな、
と思っていましたが、さすがにあまりにこの状態が続くために、
ちょっと立ち止まって自分の心を見つめていました。

まず気付いたのは、構えて、心理的な距離を作り出していたのは、
患者さんサイドではなくて、私の方だったこと。
これ以上関係を悪化させてはいけないと思い、
丁寧に対応しなければいけないと思っていたこと。

つまり、「患者さんのためではなく、自分のための医療になっていた」のです。
まずこれに気付きました。

このような心の流れでは、絶対にうまくいくはずがありません。
人間対人間の関係というものは、見えない力が作用するので、
心が間違っていると、表面だけ取り繕っていても、
絶対にうまくいかないものなのです。

いずれにせよ、残された時間が少ないのであれば、
何よりも優先して、その患者さんにとって一番いい選択を
こちらがすべきだと気付きました。

不安材料をすべて捨てて、そういう事情をすべて忘れて、
一主治医として、最善の関わりをしていこうと、心を切り替えました。
そのように思った瞬間に、私自身の心の重荷が消え、
急速に関係が改善していきました。

これは、ものすごく驚いた出来事でした。
心の持ち方一つで、状況ががらりと変わることがあることを
そのときに知りました。

心を見つめ、正していくことが、これほどまでに大きな力を持つのか、
という一つの具体例です。

【8】医療者のメンタルヘルスケア
問題は患者ではなく医療者の心?




■ 問題は患者ではなく医療者の心?

 「医療現場で人の問題を援助していると、
 なぜか医療者自身の課題が表面化してくる」

さて、今述べたことは、こういう視点もあります。それは、

「医療現場で人の問題を援助していると、
なぜか医療者自身の課題が表面化してくる」


ということです。

これは、扱う問題が非常に微妙で深いため、問題解決のために、
自分自身との対決が不可欠になってくるからだろうと思います。

先ほどの症例で言うなら、私自身の問題点は、自己保身の心、でした。

患者さんがもう一歩よくならない場合、
もしかすると問題は私たち医療者の心にあるかもしれない、
という観点から見つめていくことも大切です。

たとえば、患者さんよりも、
自分を優先した仕事になっているのかもしれません。
本来は入院させるべき人を、夕方になって受診したため、
自分の都合で入院させないで帰してしまうことだってあるでしょう。

休日には休みたいですから、週末、具合の悪い患者さんを、
他の病院に転送することもあります。
こういうことは、無意識に行ってしまうのです。
そういう私もそのような選択はよくやっていました。
今も疲れているとそうなります。

しかし人間というものは、自分の都合を優先させて生きていると、
どうも不幸感覚が強くなってくるのです。

また、そのような姿勢で医療を行っていると、
患者さんは結構見抜きますので、関係が悪化することもあります。

何となく楽しくなかったり、
患者さんとうまくいかない状態が続いた場合は、
自分自身の課題がそこにあるのかもしれないと思い、
ちょっと振り返ってみることも必要です。

このように、日常的な、自分の心と行ないの傾向性を知ることが大切です。
日々、できる範囲で心をふり返ることが、自分の課題の発見につながり、
意外なところで自分自身の心を救うことにつながってくるのです。


【9】医療者のメンタルヘルスケア
自分の心を客観視する能力・失恋克服の例




■ 自分の心を客観視する能力

 1)今、どんなことを考えているのか
 2)自分の心がどのような状態にあるのか
 3)自分の心を、コントロールできるか

さて、心を見つめるとは、どういうことでしょうか。
たとえて言うなら、自分の心を第三者の目で客観視してみる、
ということです。

今、何を考えているのか、
自分の心がどのような状態にあるのかを認識し、
更にその心をある程度、自分の支配下に置くことができればベストです。

しかし、心を支配下に置く、というのは、ものすごく難しいです。
たとえば、自分の恋人に他に好きな人ができたとします。

そんなときの怒りや嫉妬心、というものは、
到底、コントロールできるものではありません。
このような感情は、年齢に関係ないでしょう。
時間が経たないと、この手の苦しみは、
なかなか癒えるものではありません。

そういうときにどうするか。
まず、自分が嫉妬していること、激しい怒りを感じていることを、
自分できちっと認識するのです。
そしてとても苦しんでいる自分、というものを知るのです。

それは、たとえて言うなら、
自分が自分をちょっと離れて見ているような視点です。
客観的にこの苦しみを認識しつつ、
いつ頃この感情が収まるか、どうすれば心が平静になるか、
たとえば3年後も同じ苦しみが続いているだろうか、とかいうことを
あれこれ考えてみるのです。

同じ苦しみは普通は3年以上も続きません。
だったら、3年、頑張ってみよう。

そう思って、嵐が過ぎるのをじっと待つ、
という姿勢に変える方法もあります。

それだけのことで、苦しみが半分になります。
失恋で思いつめて自殺する人もいますが、数年経ってみたら、
意外にたいしたことのない出来事に変わっているものです。

自分の悩み苦しみというものは、考え方一つで、
自分で解決できるものだと知ることが大切です。
このような形で、心をコントロールしていくのです。

【10】医療者のメンタルヘルスケア
心の法則とは・人類普遍のルール




心の法則とは

 心の法則には、人類普遍のルールがある
 苦しみや悩みも、法則に則って生じてくる


さて、心というものには一つの法則があります。
人類普遍のルールがあるのです。

うちのウサギも、いたずらをして怒られたときには、しょんぼりした顔をします。
いたずらをするのは悪いことだと教えられたから、そう思うわけではありません。
良心というものは、普遍のものなのです。

花を見てきれいだと思うことも、いい映画を見て感動することも、
それは美しいから、感動するから、と教えられたからではないのです。
教えられたわけではないのに、私たちはすでに知っているのです。
何がよくて何が悪いのか。何が正しくて何がいいことなのか。
どういう心が辛くて悲しいことなのか。すべて知っています。

ですから、悪いことを選択すると、苦しみや悩みが生まれてくるのです。
先ほどの怒りや嫉妬も同じです。そのような心の状態は苦しいのです。
しかしその逆に、人に対する許しや、祝福は、心を穏やかにします。
これが心の法則です。

私たちは少なくとも人は騙せても、自分自身は騙せません。
人は、自分を守ろうとしてウソをつくことがありますが、
ウソをついたということを、自分だけは知っています。
そして後ろめたいですね。

結局、心の法則に則って、よりよいものを選び取ること、
自分の本当の良心に忠実に生きることが、精神衛生上はいいことなのです。

心が辛いときには、自分の心のなかに、反省すべき点があるはずですから、
今、辛いんだ、ということを認識することが出発点なのです。

【11】医療者のメンタルヘルスケア
心の法則の例え:賞賛を求める心、見返りを求める心




■「賞賛を求める心」
 「見返りを求める心」
 この心は自分でなかなか意識できないため、直視するのが困難

さて、心の法則について説明しましたが、
これからいくつかたとえをあげていきたいと思います。

まず、医療者が陥りやすい心についてお話しします。
医療者は使命感を持っている方が多いので、どちらかというと、
優れた人が多いと思います。

ですから、一生懸命やればやるほど周囲からの評判も高くなり、
患者さんも集まってきます。それはもちろん素晴らしいことなのですが、
そのときにちょっとした注意が必要です。

人は、いったんいい評判が立つと、その期待に応えなくてはならない
という義務感が出てきて、ますます頑張ります。
頑張れる力があるうちはいいのですが、自分の能力の限界を超えてしまうと、
エネルギーが枯渇してしまい、抑うつ状態に陥ったり、
神経症を発症してしまうことがあります。

周囲の評価も高く、一生懸命仕事をしている人が、
突然、仕事が続けられない状態に陥ってしまいます。
そこには、ひとつの共通のパターンがあることに気付きます。
それは一体どのようなものなのでしょうか。

「自分への賞賛を求める心」
「見返りを期待する心」

この誰にでもありそうな心が、医療の現場ではともすると、
命取りになってしまうのではないかと思うのです。

【12】医療者のメンタルヘルスケア
医療行為における見返りを求める心とは?




■医療行為における見返りを求める心とは?

 1)患者さんといい関係でいることを誇る心
 2)周囲のスタッフからの評価を求める心

 内なる価値基準→外なる価値基準に支配されてしまう

たとえば、患者さんといい関係でいることを誇る心や、
それを周囲のスタッフに評価してもらいたい、と思う心です。

いい関係を築けるのはとても素晴らしいことですが、
無意識のうちに、患者さんからのほめ言葉を期待したり、
頼られる自分の姿というものに酔っている場合は、
ちょっと方向が違ってしまいます。

使命感を持って始めた医療行為が、いつの間にか時間の流れのなかで、
「人びとのための医療」から、「自分をよく見せるための医療」
に変わっていってしまうことが多いように思うのです。

私自身もこの状態に陥り、自分は自分をどう見るのか、
という内なる価値基準がいつの間にか崩れ、人からどう思われているのか、
という外なる価値基準に支配されていた時期がありました。

本当の意味で自信があれば、
人の評価の上がり下がりで揺れないものだと思います。
これは、心の法則から考えると、辛くなる部類に入るので、修正が必要です。

【13】医療者のメンタルヘルスケア
自信のなさを患者さんと親しくなりすぎる事でうめる心・患者さんとの距離




■患者さんとの関係

 どこまで入り込むか

 「必要以上に、患者さんと仲良くなってはいけない」という指導医の言葉
  自信のなさを埋めるために、心理的な距離を近づけることで代償してしまう

もう一つ、別のたとえを出したいと思います。

研修医の頃、指導医に、こんなことを教えられました。
それは、「必要以上に、患者さんと仲良くなってはいけない」
ということです。

理由は、「必要以上に深く入り込むと、的確な判断ができなくなるから」
とのことでした。

しかし私は深く関われば関わるほどいいことなのではないか、と考えました。
その指導医の言葉を無視して、
時間があれば担当の患者さんのところに足を運んでいました。

しかし、深く入り込めば入り込むほど、気になることが増えてきたのです。
感情移入しすぎて、身内のような判断になってしまうこともありました。

必要もないのに、呼び出されることがありました。
自宅に電話がかかってきたこともありました。
あの人はどうだとかこうだとか、他の患者さんや看護師の悪口を、
私に告白するようになりました。

これは患者さんが悪いわけではなく、
それを引き出した私自身に問題があったのです。

そこで分かったことは、医師、患者という、
それぞれの役割を超えてはいけない、ということでした。
密接になりすぎてしまってはいけなかったのです。

更に深く心を見つめてみると、こんなことが分かってきました。
当時は研修医ですから、自分の医療の技術や診断に
自信が持てないわけです。そのような状態のときには、
必要以上に患者さんに接近してしまうことがあります。

自信のなさを埋めるために、心理的な距離を近づけることで
代償してしまうのです。そして医療者側のそのような無意識の心は、
ときに患者さんに依存する心を生じさせてしまうものなのです。

このような経験は、みなさまにも起こりうると思います。
しかし地道に実践を積み重ね、いい意味での自信が出てくると、
必要以上に仲良くなろうとする心は自然に沈静化していきますので、
頑張って乗りきって下さい。

【14】医療者のメンタルヘルスケア
客観性を持ちながらも患者さんに深い関心を寄せる




■「客観性を失わずして、同時に患者さんに深い関心を寄せること」
 この相矛盾することを、努力して融合していくこと

今言っていることは、
患者さんと深く関わることがいけないんだ、
というお話ではありません。
医師、患者関係を超えて、依存しあう関係がよくない、
ということです。

それを知らなければ、
いずれその精神的な重荷に耐えられなくなり、
潰れてしまう医療者も多いのです。ですから、
ある一定のところで医療者として毅然とした態度は必要だ、
ということを知っておくといいと思います。

この微妙な距離感の取り方が分からないと、
挫折してしまうのです。
そのような現実を知った上で、
自分なりの関わりを模索していくことが大切です。

「客観性を失わずして、同時に患者さんに深い関心を寄せること」
これが一番大切です。

この相矛盾することを、努力して融合していくことが、
今、まさに求められているのではないでしょうか。

「患者さんと仲良くなる」という言葉とは、
全く質の違う関わりになるでしょう。
なぜならこれは、患者さんのみならず、医療者自身をも
高めていく方法だからです。

【15】医療者のメンタルヘルスケア
自分のための医療は治療に結びつかないことが多い




■自分のための医療を行っていると、
 真の意味で、治癒に結びつかないことが多い

この「見返りを求める心」は、
自分ではなかなか意識できないため、直視するのが困難です。
根底にちょっと違った心があっても、それに気付くのは難しいです。
しかし医療行為は同じでも、心の方向性が間違っていると、
結果が変わってきます。

先ほどの症例にもありましたが、
自分のための医療を行っていると、患者さんは敏感ですので、
真の意味での治癒に結びつかないことが多いように思います。

精神科、心療内科領域は、特にそうかもしれません。
心が疲れている人、病を持つ人は、医療者が本当に自分のことを
考えてくれているのかどうか、それとも表面的なものかは、
案外簡単に見抜くものです。

【16】医療者のメンタルヘルスケア
自分の経験と人格を高めること




■自分の経験と人格を高めること
 そのために、心を見つめる習慣をつけることが大切
 「自分の経験を智慧に変えていくこと」
 
もちろん、多くの人に認めてもらいたい、
という心がなければ、自分を奮い立たせることはできませんし、
いい仕事など残せません。

それらは決して悪い心ではないのですが、
それにとらわれ過ぎる姿勢、がよくないのです。

焦燥感は強くなりますし、人を嫉妬する心も出てくるでしょうし、
何より、心安まるときがありません。
この状態は、自分の心を疲れさせてしまいます。

この状況をよりよい方向に変えていくには、
自分の経験と人格、というものを、
もう一段、高みに導いていくことしかないのです。

自分なりの医療行為を深めていくなかで、
どれだけ自分の経験を智慧に変えていけるか、
どれだけ自分の人格をのばしていけるか、
こういう視点が大切ではないかと思います。

【17】医療者のメンタルヘルスケア
患者さんの心を理解する




■ 患者さんの不満について

 会社や家庭での不満が、医療現場で形を変えて噴出することがある。
 不満の奥に隠された心の流れをもう一段深く見つめること。
 →全く新しい解決策が見つかることが多い

また、今言った話に関連しているのですが、
患者さんサイドの、会社や家庭での不満が、形を変えて、
医療現場で噴出してくることがあります。

やり場のない怒りや不機嫌さを、
自分の持ち場で発散できればいいのですが、そのような場で出せない人は、
自分が病院を受診したときとか、家族が入院している、といった場合に、
無意識のうちにそのはけ口が医療従事者に向くことがあります。

他の人が怒らないような待ち時間なのに、
「こんなに待たせるとはどういうことだ」と怒ったり、
医師や看護師の言葉尻をとらえて、
怒らなくてもいいような場面で感情的になる人がいます。

怒る原因は、もちろん医療者側にもあるのですが、
本質は個人的な問題であることも多いのです。
このようなパターンは、結構多いです。

これに気付かないと、医療者は批判をダイレクトに受けてしまうので、
心身共に疲れきってしまうことがあります。
また、人に対して失望してしまいます。

しかし、不満の奥に隠された心の流れをもう一段深く見つめることで、
全く新しい解決策が見つかることがあるのです。
もしかするとこの苦情や不満は、形を変えたものかもしれないと
心の片隅に置いておくといいと思います。

そのような視点を持つことで、医療者もこの感情の渦には巻き込まれません。
自分たちも結構よくやっているな、と思うのに、
不当な不満をぶつけられたときは、少し冷静になって、
相手を理解しようと思う心の余裕が大切です。

医療者側が、不満という感情に対し、もう一段深い理解を示したときに、
直接働きかけたわけでもないのに、相手が変わっていく、
ということが実際にあるのです。

このような心の流れもある、と知っておくといいと思います。

【18】医療者のメンタルヘルスケア
感情的に考えすぎない、合理的・理性的な判断




■ 感情的に考え過ぎないこと
 
合理的、理性的に判断する訓練を
 自分だけの物差しを離れた目で自分を見る、ということ

今言ったように、医療現場にはいろんな人が来ますので、
相手が感情的になる場合もあれば、私たちも感情的になる機会が多いと思います。

また、生死を扱っている仕事ですから、
スタッフ間で意見の食い違いが生じ、感情が爆発することもあるでしょう。
高い理想を抱いている人ほど、正しさを求める気持ちが強いため、
気をつけないと人を責めてしまいます。

感情的に正義をふりかざしたり、患者さんを説得しようとしたり、
結局、それが空回りしてしまうのです。
物事をあまり感情的に考えると、悩みの渦の中に入ってしまい、
もう、どうしたらいいのか全く分からなくなります。

医療者はできる限り、感情や情緒に流されないで、
理性的に判断するトレーニングが大切です。
しがらみや感情、というものをいったん脇において、
クールな見方で自己を分析したり、
問題点を分析するトレーニングをしていく必要があるのです。

自分だけの物差しを離れた目で自分を見る、ということです。
このトレーニングが相手の心の流れを見つめる、自分の心に向き合う、
ということなのです。

【19】医療者のメンタルヘルスケア
周りの風景と自分の心の相関関係




■自分の環境、自分の目に映る世界は、
 それを見るものの心を映し出す。
 今の自分の心の状態を知りたければ、
 周りの風景を見ること。

さて、どうすれば、
自分の心の状態を客観的に見ることができるでしょうか。
ひとつの方法は、目に映る世界、という判断基準があります。
人の心は合わせ鏡、という言葉通り、周りの人がよく見えるのなら、
今の心は調和がとれていて、ベストな状態です。

逆に周囲の人や環境に不満があるのなら、それは自らの心に、
マイナス要因があるのかもしれません。
自分の心の状態がつかめないときは、心をそのまま反映する、
目に映るもので、チェックすることが可能です。

「穏やかで平静な心」で生きている、ということ自体が、
非常に価値のあることだと思います。
そしてこれこそが、忙しい現代社会を生きる私たちの
ストレスマネージメントそのものなのです。

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